17.微量融点測定器の使用法
概要・一般的注意
動画は特定の実在する物質の融点測定を示すものではなく,その融点の値や溶融するときの形態変化は仮想的な物質のものである.
融点(meltingpoint)は物質の基本的物性の一つであり,文献値と比較することによってその同定に利用される.
標品と混合して融解した後,冷やして固化した試料の融点が元のものと同じであれば,確実な同定となる(混融試験).
純粋な有機物質では,溶け始めと溶け終わりまでの幅は狭く,数℃の範囲に納まる.純度が低いと幅が広がり,文献値よりもかなり低くなる.
しかし,測定の際の温度上昇が速すぎる場合にも,見かけ上低い融点となるので,温度上昇は注意深く行う.
使用後,熱板上の試料を拭き取る際には,熱板の樹脂コーティングを傷つけないように注意する.
微量融点測定器 操作法・使い方
電源(POWER)と温度調節ツマミ(TEMP.VOL.)がOFFになっていることを確認してから電源プラグをコンセントに差し込む.
電源をONにする.
熱板に試料をごく少量(スパチュラのくぼみの1/10程度)取り,なるべく結晶の粒子が重ならないよう薄く広げる.
熱板の上にカバーグラスをかける.
保護カバーとルーペを熱板の上に固定する.
温度調節ツマミで温度上昇速度を次のように設定する.
10〜20℃/分―融点より30℃下まで
2℃/分―融点より10℃下まで
1℃/分―融点付近
上昇速度は,温度上昇が遅い場合は電圧を高く,温度上昇が速い場合は電圧を低くして調節する.
重なっていない結晶粒子に注目して,その状態変化を観察する.融け始めたときと融け終わったときの温度を記録する(例:mp95〜97℃).
測定終了後は,温度調節ツマミをOFFにして,熱板の温度が室温付近まで下がったのを確認して,電源をOFFにする.
脱脂綿に少量のエタノールを含ませ,熱板上の試料を拭き取る.