12.自然ろ過の操作法
概要・一般的注意
動画は無機定性分析実験において実習する,次の反応で生じる水酸化鉄(III)の分離を例にとって,「自然ろ過」を説明している.
Fe3++3OH-→Fe(OH)3↓
最後に,ろ紙上の残った水酸化鉄(III)に塩酸を加えて,これを溶解する操作を説明している.
Fe(OH)3+3HCl→Fe3++3H2O+3Cl-↓
ろ紙と漏斗(ロート)だけを用いて,沈殿を溶液から分離する方法である.
粗い沈殿の分離に適している.
沈殿に適したろ紙を選ぶ.
軽くて細かい沈殿の場合には,吸引ろ過が適している.
ろ紙と漏斗が密着していないと,漏斗の足に泡が入り,ろ過の速度が遅くなる.
沈殿が漏れることがあるので,液面は切り欠き部分を越えないようにする.また,軽い沈殿がろ紙の上端へはい上がることがあるので,液面はろ紙の上端より5mmぐらい下までにとどめる.
操作法・使い方
装置の準備
ろ紙は四つ折りにして,その一方を袋状に広げて漏斗にはめ込む.
ろ紙が漏斗にうまく沿わないときは,ろ紙の折り目を少しずらせて漏斗の角度に合わせる.
ろ紙の密着をよくするために,重なったろ紙が漏斗に接する角の部分を斜めに切り取る.ろ紙を溶媒で潤し,手で押さえて漏斗に密着させる.
漏斗の足が壁面に沿うように,ろ液の受器を置く.
ろ過の操作
容器の口に撹拌棒を沿わせて液を静かに注ぐ.
ろ液が欲しいときには,まず上澄み液の大部分をろ過してから,沈殿を含む溶液をろ紙上に流し込むと,ろ過が速く進む.
沈殿が欲しいときには,まず液と沈殿をかき混ぜながら勢いよくろ紙上に注ぎ込み,容器に残った沈殿をろ液を戻して洗い,再びろ過する.
ろ紙上の沈殿に洗浄液を注いで,2~3回洗浄する.
ろ紙上の沈殿の集め方
ろ紙上の沈殿にそれを溶かす試薬を注ぎかけ,溶液として取り出す.
または,ろ紙をビーカーの内壁に貼り付け,スポイトを用いて液体を沈殿に注ぎかけ溶かし出す.