16.薄層クロマトグラフィー(TLC)
概要・一般的注意
動画は長さ10cmの薄層板を用いて説明している.5cmの薄層板の場合は,出発線の高さ等を説明より少し小さな値に設定する.
動画は有機化学実験において実習する,4-メトキシ-2-ニトロアセトアニリドと次の反応で生じる4-メトキシ-2-ニトロアニリンのTLC(シリカゲル,展開液:33%EtOAc/ヘキサン,試料溶解用溶媒:50%EtOH/EtOAc,検出:254nm)を例にとって,「TLCによる分析」を説明している.
薄層板(シリカゲルを薄く塗布したガラス板,アルミ板またはプラスチック板)の一端を溶媒(これを展開液と呼ぶ)に浸し,展開液とともに試料が移動するときの移動距離の違いによって物質を分離する方法である.物質の純度検定や反応の進行の確認に利用される.
Rf値は薄層板の種類,展開液,温度等の条件が一定ならば,一般的には再現性よく一定値を示す.そのため,この値およびスポットの形状や色から各成分の定性確認ができる.Rf値は通常小数点以下2桁までを記録する.
薄層板は縁のみを手ではさむように持つか,ピンセットを用いて取り扱い,シリカゲル塗布面に指が触れないよう注意する.
薄層板に試料を付けるときは,一度にたくさん付け過ぎてスポットが大きくなり過ぎないように注意する.
紫外線ランプを使用するときは,専用の保護めがねを着用し,紫外線が直接目に入らないように注意する.
操作法・使い方
準備
スパチュラで試料をごく少量取り,少量の溶媒を加えて溶かす.
薄層板のシリカゲル塗布面を上にして置き,端から約10mmのところにエンピツで軽く出発線を引く.
この線上に,試料を載せるための印を付け,原点とする.
試料溶液を毛細管に取り,原点の一つに軽く触れ,試料を少量付けて(スポットの大きさは2mm程度),溶媒が乾くまで放置する.必要に応じて,ドライヤーで乾燥させる.この操作を数回繰り返して,小さく濃いスポットを作る.
異なる試料を取るときは,毛細管を新しいものに替える.
展開
展開槽に展開液を約5mmの高さまで入れる.
蓋をしてしばらく置いて内部を展開液の蒸気で飽和させる.
蓋を開け,ピンセットで薄層板の上端を持ち,下端が展開液にまっすぐに浸るように入れ,瓶の内壁に立てかけて蓋を閉める.
展開液の先端が薄層板の上端から約10mmまで達すれば,展開を終了する.
Rf値の算出
ピンセットで薄層板を取り出し,直ちに展開液の先端部分に鉛筆で印を付ける.
薄層板を自然乾燥,またはドライヤーで乾燥させる.
紫外線ランプを点灯してスポットを確認し,輪郭を鉛筆で囲む.
スポットの形や色を記録する.
Rf値を算出する.
Rf=a/b
a=(原点から試料のスポットの重心までの距離)
b=(原点から展開液の先端までの距離)
原理
薄層板(シリカゲルを薄く塗布したガラス板,アルミ板またはプラスチック板)の一端を展開液に浸すと,展開液がシリカゲルに浸透して上昇する.薄層板の1点(原点)に試料を付けて展開すると,試料はシリカゲルへの吸着と脱着を繰り返し,薄層板上を移動する.このとき,シリカゲルに吸着しにくい低極性の化合物は速く移動し,吸着しやすい高極性の化合物は遅く移動する.その結果,前者は高く(原点から遠く)移動する一方,後者はあまり移動しない.この差を利用して,混合物を分離する.物質の純度検定や反応の進行の確認に利用される.