11.遠心分離機の操作法
概要・一般的注意
動画は無機定性分析実験において実習する,次の反応で生じる水酸化鉄(III)の「遠心沈降」を例にとって,遠心分離機の使用法を説明している.
Fe3++3OH-→Fe(OH)3↓
高速回転で生じる遠心力によって,沈殿を強制的に沈降させる機器である.
遠心沈降を行う際には,少量の試料が扱いやすいように底の方が円錐形に細くなっている遠心沈降管(遠心管)を用いるとよい.
回転中の破損を避けるために,傷やひびの入った遠心管の使用を避ける.
回転中に液がこぼれるのを防ぐため,遠心管に入れる液量は全体の高さの半分以下にする.
保護管を腐食させるので,遠心管の外側に付いた液は拭き取っておく.
挿入する遠心管は偶数本でなければならず,それらを回転軸に対して反対の位置に挿入する.
向かい合う2本の遠心管は,内容物と栓も含めて全体で同じ重さにする.
回転中に蓋を開けて,中に手を入れては絶対にいけない.
無用の遠心管が残っていると事故につながるので,遠心沈降が終われば,すべての遠心管を必ず取り出す.
保護管の中で遠心管が破損した場合は,直ちに回転を止め,ガラスの破片や液を完全に取り除いてから,保護管を水洗し乾燥する.
操作法・使い方
バランス(天秤)の操作
バランスの平衡が保たれていることを確認し,左右どちらかに片寄っているときは,両端のねじで調整する.
バランスの一方に,試料溶液を,もう一方に空の遠心管を載せる.
空の遠心管に蒸留水を入れ,試料と同じ重さに合わせる.バランスが静止するまで待つことはなく,左右の振れ幅が等しくなればよい.
ゴム栓などを付けた遠心管で遠心沈降を行うときは,釣り合いのための遠心管にも同じ重さのゴム栓を付ける.
遠心分離機の操作
バランスを用いて試料とそれと同じ重さの遠心管を用意する.
2本の遠心管を,回転軸に対して反対の位置に入れる.
蓋をしっかりと閉める.
速度調節ダイヤルを低速側から高速側にゆっくり回して設定値に合わせて,回転を始める.
回転を止めるときは,スイッチを切り,ローターが自然に止まるのを待つ.
回転が完全に止まったことを確かめてから,遠心管を静かに取り出す.